研究課題
(1) MuSK抗体MG患者の病態に則した動物疾患モデルを使った病態解明.補体欠損マウスに、精製したMuSKリコンビナント蛋白をアジュバントと一緒に2週間おきに免疫して全てのマウスにMGを発症させることに世界で初めて成功している.このモデルマウスを使って、MGを発症したマウスの機能解析(筋電図、微小ガラス電極法、筋力低下、筋萎縮)、筋線維の萎縮(HE染色)、神経筋シナプスの病理学的解析(免疫組織染色、走査型及び透過型電子顕微鏡)を行った.以上の解析結果からMuSK MGの発症に補体の活性化が必ずしも必要ないことを証明することができた.さらに、発症したマウスの神経筋シナプスの解析から、MuSKの発現している筋側シナプス(後膜)だけでなく運動神経終末(前膜)にも形態および機能異常があることを明らかにした.MuSKは神経シナプスの後膜と前膜の相互作用に重要な役割を果たしており、MuSK MGではその機能が自己抗体により障害されて発症することを示した.(2) 臨床への橋渡し研究のための基盤整備.本課題により確立したMuSK MG疾患モデルマウスは、患者病態と良く合致しており、抗コリン作動性クリーゼのメカニズムの解明および有効な治療法の開発に有用である.このモデルマウスはneostigmine投与後に筋電図で患者と同様な過敏性の反応を示すが、免疫組織学的解析により、シナプス後膜のアセチルコリンリセプターと同様にコリンエステラーゼの顕著な発現減少が観察された.また、ジアミノピリジンの投与によりシナプスの神経伝達が改善されることを微少ガラス電極法で見つけており、この薬物がMusK MGに対して有効である可能性がある.ジアミノピリジンはシナプス前膜の機能を強化している可能性が考えられる.
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Geriatr.Gerintol.Int.
巻: 10 ページ: S137-S147