当初はアフリカツメガエル卵母細胞に蛍光タンパク質を付加したディスフェルリンを発現させ、膜損傷・修復時における挙動を解析する予定であったが、卵母細胞の自家蛍光が強く断念せざるを得なかった。そこでGFP-ディスフェルリンまたはmCherry-アフィキシン(我々が同定したディスフェルリン結合タンパク質)を骨格筋特異的に発現させたトランスジェニック(Tg)マウスの作製を開始した。 骨格筋特異的クレアチンキナーゼプロモーターにGFP-ディスフェルリンまたはmCherry-アフィキシンをつないだTgマウス用コンストラクトを作製し、C2C12(マウス)筋管細胞において発現が可能であることを確認した。このコンストラクトをマウス受精卵にマイクロインジェクションし、生まれたマウスのジェノタイピングを現在行っている。Tgマウスが得られたら筋線維を単離し、2光子顕微鏡で筋細胞膜に損傷を与え、膜損傷・修復の過程における蛍光タンパク質の挙動をリアルタイムで観察する。 最近、竹島教授(京都大)らにより筋細胞膜修復に関与するあらたな分子、MG53が同定された。MG53は膜損傷による酸化ストレスに反応してオリゴマーを形成し、損傷部位に凝集することが報告されている。我々は竹島教授と共同研究を行い、ディスフェルリンはオリゴマーのMG53に結合し、モノマーのMG53には結合しないことを明らかにした。また、ディスフェルリンのC2AドメインはMG53との結合において重要であり、両者の結合のカルシウム依存性を担うことを見出した。正常なC2Aドメインは[Ca^<2+>]=100μMにおいてMG53に結合するが、筋ジストロフィーを引き起こすC2Aドメインのmutation、V67Dは[Ca^<2+>]=0でのみMG53に結合した。これらの結果は、ディスフエルリンとMG53は筋細胞膜の損傷部位においてCa^<2+>依存的に複合体を形成することを示唆しており、現在論文投稿中である。
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