研究課題
細胞接着分子E-selectinに対するリガンド糖鎖のSialyl Lewis Xを表面に結合させたリポソームは脳虚血部位の活性化血管内皮細胞がE-selectinを産生することより、脳虚血部位の活性化血管内皮細胞に選択的に集積する。このSialyl Lewis X結合リポソーム内に炎症を制御する薬物、蛋白質、ペプチド、抗体、核酸を内包し、活性化血管内皮細胞に発現する細胞接着分子や炎症関連因子について生体内で阻止、制御することで、脳虚血における血管内皮細胞活性化機構の生体内での役割を解明することを目的として研究を行った。脳虚血の実験モデル動物として、ラットの中大脳動脈閉塞による局所脳虚血・再灌流モデルを用いた。昨年度の成果により得られた至適条件である再灌流直後に炎症関連分子を生体内で制御する薬物を内包したSialyl Lewis X結合リポソームまたは薬物を内包していないSialyl Lewis X結合リポソームを大腿静脈より投与した。24時間後に安楽殺後、脳を取り出し、免疫組織化学を用いて脳内の細胞接着分子、炎症関連分子の制御について解析を行なった。薬物を内包していないSialyl Lewis X結合リポソームにおいても、E-selectinの阻止効果を認め、ICAM-1の発現、白血球脳内浸潤が抑制された。薬物を内包したSialyl Lewis X結合リポソームとの炎症制御に関する質的、量的な比較を行っている。研究成果により、生体内における血管内皮細胞活性化の分子機構が解明されるばかりではなく、脳虚血治療の新規標的分子の発見やそれを制御するSialyl Lewis X結合リポソームを用いた脳虚血の治療法の開発につながると考えられる。
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Contrast Media & Molecular Imaging
巻: VOL.5 ページ: 70-77