研究概要 |
パーキンソン病は,中脳黒質に主病変をもつ神経変性疾患であり,安静時振戦,筋強剛,寡動を主症状とする。症状の進行に伴ってパーキンソン病患者には高頻度に幻視が出現する。パーキンソン病の重要な症状である幻視発現の病態機序の解明を試みる.前回までに幻視の質問紙Tottori University Hallucination Rating Scale (TUHARS)にて幻視の程度を評価し,視覚認知検査Test of Visual Perceptual Skills (TVPS)にて視機能評価を行い、それらと脳MRIの関連を評価し、パーキンソン病患者に様々な要素で低下を認め,幻視群では,VBMで側頭葉の委縮がより顕著であることが明らかとなった。今回症例を幻視群10例、非幻視群30例とし、MRI以外にも脳血流シンチグラムに関しても検討を加えた。幻視群ではVBMにおいて島皮質に萎縮を認めることが示唆された。またdiffusion tensor imagingに関しての検討では、MDにおいて前頭葉白質を中心とした広範な上昇を、FAにおいて中脳の一部に低下を認めることが明らかになった。また脳血流シンチグラムにおいて既報告と同様に後頭葉を中心とした血流低下を認めたが、近年、脳血流シンチグラムにおいて脳萎縮を認める疾患では、萎縮による影響(部分容積効果)をうける可能性が指摘されている。そのため今回この影響を考慮し、部分容積効果補正を加えた画像に関しても検討した。その結果として後頭葉視覚野に加え両側側頭葉、島に血流低下が存在する可能性が示唆された。これらの異常と視覚処理過程における関係を考察する手段として視覚刺激に対する誘発電位を検討するためのプロトコールを作成し、現在まで正常者に対して試験的に行い妥当性を確認したため、今後パーキンソン病患者に対して施行していく。
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