研究概要 |
実験1.[目的]筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)は運動終板の形成・維持に重要な役割を果たす。抗コリンエステラーゼは重症筋無力症の治療としてしばしば第一選択薬として使用される。一方、抗コリンエステラーゼ薬は、運動終板でpostsynaptic foldの変性を来す。抗MuSK抗体陽性重症筋無力症患者に抗コリンエステラーゼを投与する際、運動終板の形態変化がより生じやすいかを、ラットを対象に検討した。[対象・方法]ラットにヒト抗Musk抗体陽性IgG,ヒト抗アセチルコリン抗体陽性IgG,ヒトIgGを投与した。ラットには、臭化ネオスティグミンを投与した。ひらめ筋の運動終板を観察した。[結果]抗MuSK抗体陽性IgG、抗AChR抗体陽性IgGともに、アセチルコリン受容体の減少は観察されず、補体の沈着もなかった。微細構造の変化では、臭化ネオスティグミン投与が投与されたシナプス間隙に結合織の浸潤が観察されたが、シナプスの変性はなかった。[結論]抗MuSK自己抗体陽性MGにおいても抗コリンエステラーゼは、使用可能であろう。 実験2.[目的]先天性筋無力症であるAChE欠損症のモデルであるCollagen Qの運動終板の微細構造を観察した。[方法]Collargen QノックアウトマウスとWildタイプのマウスをエーテル麻酔し、長指伸筋とひらめ筋を摘出し、電子顕微鏡1200EXにて運動終板の微細構造を観察した。[結果]微細構造では、postsynaptic foldの変性と神経終末がシュワン細胞に覆われ、postsynaptic foldの形成がない運動終板が多く見られた。[結論]これらの変化は、抗AChE阻害剤過剰投与で報告されている変化に類似していて、過剰なアセチルコリンが運動終板の形成に影響を及ぼすと推察した。実験1で抗コリンエステラーゼを過剰投与されたラットの運動終板の変化に類似していた。
|