quadripulse stimulation(QPS)は不均一連発磁気刺激の一種である。この手法は、従来の手法に比して、強力かつ長時間続く可塑性変化を運動皮質に与えることを可能としたが、これに加えて、その刺激間隔を変えることにより、運動皮質の興奮性が、抑制性にも促通性にも変化することが明らかにされた。この特長を利用して、てんかん患者の大脳皮質の興奮性を抑制することが可能となれば、難治性てんかん患者の治療応用への道が開けるものと想定される。 本研究の目標は、QPSを用いたてんかん治療の確立である。それに先立ち、まずQPSの安全性を明らかにした(2009年日本臨床神経生理学会学術大会で発表)。また、正常者に対してQPSを行い、感覚皮質の興奮性を変化させることに成功した(2010年日本臨床神経生理学会総会で発表予定)。この結果をふまえて、病変の主座が感覚皮質にあるミオクローヌスてんかん患者に対してQPSを施行し、感覚皮質の異常な興奮性を反映するとされるgiant SEPの大きさを変化させられるか否かを検証した。その結果、正常者で感覚皮質を抑制する刺激では、giant SEPの振幅を縮小させられないことが判明した。現在、刺激感覚を変えることで、ミオクローヌス患者のSEPに対する影響を検証している。 これとは別に、難治性てんかん患者に対してQPSを行い、その発作抑制を可能とする手法を検討している。現在のところ施行人数が少なく、その有効性を明らかにするためには、今後も更なるデータの蓄積が必要である。
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