我々は、CHOP欠損マウスを中心とした解析から、動脈硬化の発症・進展における小胞体ストレスと酸化ストレスの役割や相互作用を明らかにし、生体内のストレス応答を調節することによる動脈硬化に対する新規予防・治療法の可能性を探ることを目的に研究を進めてきた。 CHOP(C/EBP homologous protein)はERストレスによって誘導され、細胞をアポトーシスへと導く。我々はMφのアポトーシスに関わっているCHOPに着目し、ERストレスが動脈硬化の発症・進展にいかなる役割を果たしているのかを検討するために、CHOP欠損マウス(KO)を用いていくつかの解析を行った。 8週齢のC57BL/6JマウスとCHOP KOの後下肢動脈にカフ傷害を施した後、1週間後に動脈壁の遺伝子発現を検討したところ、CHOP KOにおいて炎症反応や平滑筋増殖因子の抑制を認めた。 CHOP KOとapoE KOを掛け合わせたダブルKOを作成し、高コレステロール食を負荷した後、粥状動脈硬化が形成された24週齢の大動脈では、CHOP KOにおいて炎症反応の強い抑制を認めた。一方でまだ動脈硬化の形成されていない14週齢においてもすでに、CHOP KOにおいて炎症反応や内皮接着因子の発現が抑制されていることを見出した。 CHOP KOにみられた反応性内膜肥厚や粥状動脈硬化の抑制は、内皮機能障害や炎症反応の抑制がその機序をなしていると考えられた。これらのことから、CHOPは内皮機能障害や炎症反応を調節することで動脈硬化促進的に働くことが示唆された。 これらの知見をもとに、血管壁構成細胞と血球細胞の小胞体ストレスがいかに動脈硬化に関わっているか、骨髄移植の手技を用いて詳細な解析をおこなっていきたい。
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