研究課題/領域番号 |
21591125
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
恒枝 宏史 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20332661)
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研究分担者 |
笹岡 利安 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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キーワード | オレキシン / うつ / インスリン抵抗性 / 糖尿病 / 糖代謝 / 視床下部 / 肝臓 / 加齢 |
研究概要 |
2型糖尿病とうつの発症には関連性が認められるが、その機序は不明である。両病態では視床下部オレキシンの発現量が減少するので、うつとインスリン抵抗性が連動して増悪する機序にオレキシンの低下が関与する可能性が考えられる。そこでまず、糖代謝調節におけるオレキシンの役割を検討した結果、マウスの自律神経バランスが迷走神経優位となる長時間の絶食条件下ではオレキシンの脳室内投与により血糖値が二相性に変化(低用量で低下、高用量で上昇)したが、交感神経優位となる摂食条件下では血糖上昇作用のみが認められた。またピルビン酸負荷試験において、低用量のオレキシンが絶食時の肝糖新生を抑制することを3系統のマウスで確認した。これらの結果はオレキシンが脳一肝連関の制御に寄与するという前年度の成績とも一致し、オレキシンは自律神経のバランス状態に依存してグルコース恒常性を制御することが示された。そこで、慢性的うつ状態がオレキシンによる糖代謝調節にどのような影響を与えるかを検討するため、野生型マウスおよびオレキシン欠損マウスを攻撃性の高いICRマウスと10日間同居させ、社会性敗北ストレスを与えた。その結果、両群とも体重や摂食量の変化を伴うことなく、少なくとも4週間にわたりうつ症状を呈したが、インスリン負荷試験により評価したオレキシン欠損マウスのインスリン感受性は野生型マウスに比べ著明に低下した。またカロリー制限後では、野生型マウスのみがうつから回復し、オレキシン欠損マウスに比べ高いインスリン感受性を示した。以上の結果から、視床下部オレキシン神経系はうつによるインスリン抵抗性の増加を防止することに加え、カロリー制限下ではより強く活性化してうつ形成自体を抑制し、インスリン感受性を維持することが示された。したがって、糖尿病の進展過程において高血糖のためにオレキシンが欠乏するとうつのリスクが増大する可能性が考えられる。
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