研究概要 |
【AP2βによるインスリン抵抗性発症機構、特にIRS-1遺伝子発現調節について】 我々はAP2βの過剰発現により糖の取り込みが亢進し、中性脂肪蓄積による脂肪細胞の肥大化が起こることを見出した。その機序は、アダプター蛋白であるGrb2-associated binder 1(Gab-1)のチロシンリン酸化、PLCγの活性とそれに引き続くatypical PKC活性化であることを明らかにした。さらに、Gab-1リン酸化機序は、EGF受容体ファミリーの1つであるNeuの発現増加によるものであることを新たに見出した。さらに、AP2β過剰発現による肥大化脂肪細胞では、(1)インスリンによるインスリン受容体のチロシンリン酸化が低下すること、(2)IRS-1蛋白発現およびリン酸化が減少することを見出した。また、MAPKキナーゼの上流分子Shcのチロシンリン酸化の亢進、MAPキナーゼ系の亢進、JNK、p38も活性化させることを見出した(未発表)。これらの成績から、AP2βによるインスリン抵抗性惹起機序は単一ではなく種々の分子が関与していると考えられる。特に、IRS-1蛋白発現量の調節については、セリンリン酸化、ユビキチン化による蛋白分解亢進による機構が知られているが、IRS-1 mRNA発現制御については研究が少ない。そこで、IRS-1遺伝子promoterをコードするLuciferase vectorを作成し(熊本大学荒木栄一教授より供与)、AP2βによる抑制の詳細な分子機構を検討したところ、AP2βが直接IRS-1遺伝子promote活性を制御していることを発見した(Meng X et al, BBRC2010)。
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