研究概要 |
【脂肪組織における転写因子TFAP2B(AP2β)の活性調節機構の解明】 転写因子TFAP2Bは、Whole Genome Single Nucleotide PolymorphismのAssociation studyにより肥満2型糖尿病とその遺伝子座が関連することが認められた糖尿病関連遺伝子である。我々は、その発現調節にTFAP2B遺伝子内のイントロン1の特定領域がエンハンサーとして関与することを見出し報告した。また、ヒト生検内臓脂肪組織および皮下脂肪組織を用いた解析により、脂肪組織内のTFAP2Bの発現量とアディポカイン(IL-6,Adiponectin,Leptin)の発現量には、in vitroの検討と同様に、IL-6とは正の相関を、AdiponectinとLeptinとは負の相関を示すことを見出し、TFAP2Bの脂肪組織内発現量のアディポカイン発現調節における重要性が示唆された。しかしながら、ヒトにおいては、TFAP2Bの発現量は肥満度などとには関連を認めず、モデル動物を用いた検討でも同様にその発現量に変化は認められなかった。これらの成績はTFAP2B発現量は遺伝的に強く規定されていることを示すものと考えられる。そこで、我々はTFAP2Bの活性調節には発現量のみならず、活性化機構が存在することを想定し、TFAP2Bの活性化機構について本年度は検討した。摂食後に活性化されるProtein Kinase C(PKC)μによりAP2βが活性化(リン酸化)され、アディポカイン発現(MCP-1,IL-6,Adiponectin)が制御されていることが判明した。すなわち、3T3L1脂肪細胞においてAP2β過剰発現によるMCP-1およびIL-6発現亢進作用およびAdiponectin発現抑制作用はPKCμによりさらに増強した。このように、転写因子TFAP2Bは遺伝的に発現量が規定され、環境要因によりその活性が調節され、アデォポカイン発現を制御していることが判明した。
|