研究課題
本年度はヒト膵外分泌組織からのインスリン分泌細胞への分化転換について集中的に検討を行った。ヒト膵外分泌組織は、膵がんなどで膵摘出術を受けた患者(計32例)からインフォームドコンセントに従い提供を受けた。摘出膵のうち、肉眼的に正常と思われる部分を分離してコラゲナーゼ消化後、残存膵島はジチゾン染色で除去した。単離膵外分泌細胞は0.5%血清と20ng/nl EGFを含むRPMI-1640培地で約2週間浮遊培養し、real-time RT-PCRによる遺伝子発現プロファイルやインスリン分泌反応を指標として細胞特性の変化を評価した。32例のうち21例で細胞分離に成功し、そのうちRT-PCRによる評価の可能であった19例すべてにおいてPdx1の発現誘導を認めた。残りの11例では、慢性膵炎による組織の線維化が顕著なため正常細胞の分離ができなかった。インスリンの発現はRT-PCRによる評価の可能であった19例のうち11例で認められ、これらの例では膵β細胞を特徴づける遺伝子(グルコキナーゼ、SUR1、Kir6.2、MafA、NeuroD)の発現も誘導された。一方、膵外分泌細胞を特徴づけるアミラーゼ、エラスターゼの発現は消失したことから、ここで用いた条件での培養によって本来の外分泌細胞としての特性を失ったものと考えられた。取得した細胞数の特に多かった4例についてはインスリン分泌反応を検討することができた。その結果、グルコース、高濃度KCl、グリベンクラミドによるインスリン分泌反応が認められた。興味深いことに、グルカゴンとソマトスタチンの発現誘導も見られた。
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