研究概要 |
本研究の目的は、膵島自己抗原を用いた抗原特異的免疫寛容療法を中心としたヒト1型糖尿病の進展阻止,および寛解誘導療法の開発である。特に現在臨床応用が進められている、発症直後のヒト1型糖尿病患者に対する自己抗原+Alumアジュバントの皮下投与が、限定的ではあるが、ある一定の効果が報告されてことから、この発症抑制効果を増強させる、自己抗原免疫療法を、投与ルート,アジュバント,補助療法を検討し,新たに開発することである. 我々はこれまでに、ヒト1型糖尿病のモデルマウスである、NODマウスに対し、主要な自己抗原である、インスリンB鎖の9-23番目のペプチド(B:9-23)の皮下投与に、poly I:Cの腹腔内投与を併用することで、強力な糖尿病発症抑制効果を報告した。今回は、12週齢の雌性NODマウスを用いて、B:9-23ペプチド+Alumアジュバントの単回皮下投与行い、その後、B:9-23ペプチド+poly I:Cの経鼻投与を行い、発症抑制効果を検討したところ、皮下投与単独に比して、B:9-23ペプチド+poly I:qの経鼻投与追加群で有意な発症抑制増強効果を認めた。B:9-23ペプチド+Alumアジュバント皮下投与と経鼻免疫追加マウスにおいて、4週間後の脾細胞を採取し、in vitroの系にて、B:9-23ペプチドの再刺激反応を行い、刺激後のリンパ球の、制御性T細胞のFox P3の発現について、フローサイトメトリー法により検討した結果、皮下投与単独群との有意な差を認めなかった。 このように、膵島自己抗原を用いた抗原特異的免疫寛容療法において、自己抗原の皮下投与に加えて、poly ICを粘膜アジュバントに応用した経鼻免疫療法を併用することは、その治療効果を増強する可能性が示されたが、制御性T細胞機能の増強の証拠は得られなかった。
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