本研究では、サーチュインに着目して、尿細管障害におけるミトコンドリア異常が酸化ストレス・炎症・アポトーシス・epithelial to mesenchymal transitionを介して糖尿病腎症の成因となっているとの仮説のもと、その意義と制御手段を、糖尿病マウスおよび遺伝子改変サーチュイン(Sirt1過剰発現およびノックアウト)マウスを用いて解明する。本年度は、2型糖尿病モデルマウス(9週齢から8週間)および老化マウス(12ヶ月齢から12ヶ月間)に対するカロリー制限(通常食の40%)の腎障害に対する効果を検討した。2型糖尿病マウスの組織学的異常であるメサンギウム領域の拡大および尿アルブミン排泄量の増加がカロリー制限によって改善した。また、糖尿病マウスではミトコンドリアバイオジェネーシスは生じていたが、逆にMn-SOD活性の低下がみられたが、それら変異はカロリー制限によって改善した。老化マウスにおいても、カロリー制限によって腎組織障害およびミトコンドリア遺伝子変異の改善がみられ、腎機能低下も改善していた。電子顕微鏡にて、老化マウスのミトコンドリア形態異常と遺伝子変異、および酸化ストレスの亢進がみられたが、それら異常はカロリー制限によって改善した。
|