本研究では、サーチュインに着目して、尿細管障害におけるミトコンドリア異常が酸化ストレス・炎症・を介して糖尿病腎症および加齢腎障害の成因となっているとの仮説のもと、その意義と制御手段を、糖尿病マウスおよび加齢マウスを用いて解明したに対して、サーチュイン活性物質として知られているレスベラトロールの効果を検証した。その結果、2型糖尿病腎においては、サーチュイン非依存性に、抗酸化作用を介して腎障害を改善することが明らかとなった。次いで、加齢腎に対するカロリー制限の効果を検証した。その結果、カロリー制限によって腎組織障害およびミトコンドリア遺伝子変異の改善がみられ、腎機能低下も改善していた。電子顕微鏡にて、老化マウスのミトコンドリア形態異常と遺伝子変異、および酸化ストレスの亢進がみられたが、それら異常はカロリー制限によって改善した。その分子基盤として、加齢によるオートファジー機構の低下が腎障害に関連しており、カロリー制限によってオートファジー機構が維持されると腎障害が改善されることを見い出した。
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