わが国では糖尿病の増加とともに、その結果として末期腎不全に至り透析導入も増加の一途を辿り医療費の顕著な増大が起こってきた。糖尿病ではミトコンドリアの酸化的リン酸化反応の減弱化やミトコンドリア数は減少する。一方、カロリー制限やレスベラトロールにより活性化される抗老化分子サーチュインは、酸化的リン酸化反応とPGC1-αを介したミトコンドリアバイオジェネーシスに関連する遺伝子を誘導することによって、ミトコンドリア機能を制御している。そこで、本研究では、サーチュィシに着目して、尿細管障害におけるミトコンドリア異常が酸化ストレス・炎症・アポトーシスを介して糖尿病腎症の成因となっているとの仮説のもと、その意義と制御手段を、糖尿病マウスおよびカロリー制限遺伝マウスを用いて解明する。平成23年度には、(1)レスベラトロールは腎ではサーチュイン非依存性に抗酸化作用を介して腎保護を発揮すること、(2)カロリー制限によって、糖尿病肥満ラットの腎障害がSIRT1-オートファジー機構の維持によるミトコンドリア形態の正常化により改善すること、(3)カロリー制限によってマウスの血清において、通常食群にて増加する蛋白プロファイルはカロリー制限によってよくせいされること、を見い出した。
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