研究概要 |
ヒト・マウスのいずれにおいてもMHC領域の1型糖尿病遺伝子が疾患感受性に最も強く関与すること、かつコンジェニックマウスの解析結果に基づいてヒト対応領域を解析した結果、MHC領域の1型糖尿病遺伝子がクラスIIおよびクラスI遺伝子の両者から構築される遺伝子複合体であるとのこれまでの我々の研究成果に基づいて、同領域の1型糖尿病遺伝子を病型別に詳細な解析を行った。急性発症典型例(338例)、緩徐進行1型糖尿病(127例)、劇症1型糖尿病(80例)および健常対照者(396例)のそれぞれに関してHLAクラスII(DRB1,DQB1)、クラスI(A,B,C)の遺伝子解析および拡大HLA領域(約8.5Mb)の候補遺伝子SNP(n=101)を網羅的に解析した。その結果、劇症1型糖尿病のHLAはクラスII遺伝子、クラスI遺伝子、網羅的SNP解析のいずれに関しても急性発症1型糖尿病・緩徐進行1型糖尿病と質的に異なること、緩徐進行1型糖尿病のHLAは急性発症典型例と質的には同じであるが、量的に差を認め、急性発症1型糖尿病の発症には感受性HLAが2つ必要であるのに対して、緩徐進行1型糖尿病では感受性HLAが1つであっても発症しうることが示された。劇症1型糖尿病のHLAが急性発症と質的に異なるのは成因の違い(劇症:特発性、急性発症・緩徐進行:自己免疫性)を反映している可能性が考えられるのに対して、緩徐進行1型糖尿病が優性発症と量的に異なるのは、同じ自己免疫性という成因で破壊の強さ・速さの面で異なることを反映するものと考えられる。
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