研究概要 |
前年度までの研究で,KK/Taマウスはメタボリックシンドローム様の表現型を有し寿命短縮を示すにもかかわらず,Sirt1遺伝子mRNAは肝,骨格筋,脂肪組織のいずれにおいてもC57BL/6マウスより増加していることが示された。そこで,Sirt1が蛋白レベルでも増加しているかどうかを,Western blotting法で検討した。その結果,KK/Taマウスの肝ではSirt1蛋白が有意に増加しており,アディポネクチン遺伝子導入により発現量の有意の変化を示さないことが明らかになった。Sirt1酵素活性は未測定であるが,アディポネクチンがSirt1の活性化を介してKK/Taマウスの寿命を延長した可能性は低い。一方,KK/Taマウスの肝においてはCrp遺伝子発現が有意に高く,アディポネクチンにより発現の抑制がみられた。血中高感度CRP濃度もKK/Taマウスで上昇傾向を示し,アディポネクチン遺伝子導入によりC57BL/6マウスと同レベルに抑制された。炎症反応に関与するNfkbおよびTnf,I16遺伝子発現もKK/Taマウスで高く,アディポネクチンTgKK/Taマウスで抑制されていた。また,リン酸化Akt/総Akt比はKK/TaマウスとC57BL/6マウスとでは差が無かったが,アディポネクチンTgKK/Taマウスでは有意に低値であった。Aktは細胞増殖およびアポトーシスを制御するとともに,炎症関連遺伝子の転写に関与する。したがって,アディポネクチンの寿命延長効果にはAktシグナルの抑制が関与すると考えられる。
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