PCSK9は細胞内コレステロール濃度の低下によりSREB2を介し誘導され、何らかのメカニズムによりLDL受容体の細胞内分解を促進と考えられている。その機能亢進型変異は家族性高コレステロール血症の原因として注目されている。われわれは、PCSK9の機能亢進型変異であるE32Kの一般人に占める頻度がきわめて高く(約2%)、互いに血縁のない同変異による家族性高コレステロール血症ホモ接合体を2例経験し、その特徴を論文発表した(Noguchi T et al.Atherosclerosis 210;166-172:2010)。PCSK9 E32K変異ホモ接合体の平均LDLコレステロール値は339mg/dLであり、LDL受容体遺伝子異常による家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体と比較しても重症であった。LDL受容体変異による家族性高コレステロールと異なり、スタチン製剤へも良好に反応した。 この2例に対し、安定同位体を用いた代謝研究を行った。その結果、予想された通りLDL異化が正常者と比較し低下し(0.217±0.021vs.0.455±0.114pools/day)、さらに興味深いことにVLDL合成、直接異化ともに亢進し、IDLへの異化は低下していた。さらにスタチン製剤を用いた代謝の変化を検討中である。 PCSK9 E32K変異ヘテロ接合体の血漿PCSK9濃度は、正常者に比較し有意に高値であった(349±90ng/mLvs.266±112ng/mL)。さらに興味深いことに、血漿PCSK9濃度と血清LDLコレステロール値には強い正相関を認め、血漿PCSK9濃度と血清LDLC値の相関はPCSK9 E32K変異でより急峻であった。一方、LDL受容体変異による家族性高コレステロール血症では両者に相関を認めなかった(Noguchi T et al.Atherosclerosis 210;166-172:2010)。
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