研究課題
我々は現在、高果糖食による肝臓での脂質合成系遺伝子に対する転写調節の変化および、脂肪肝や糖・脂質代謝異常への分子機構についての検討を行っている。1.果糖摂取により、肝臓細胞内でのヘキソサミン経路を介した蛋白へのO-結合型糖修飾(O-GlcNAc)酵素(転移酵素:OGTと解離酵素:OGA)の調節に異常をきたし、糖・脂質代謝異常をもたらしていると予想している。高果糖食による肝臓での脂質合成系遺伝子の転写因子SREBP-1cの発現上昇に、マウス系統間で差異を認めることを我々は報告しており、今回マウス系統間での高果糖食による肝臓内核蛋白へのO-GlcNAc修飾も差異を認めるかを検討した。各4週令の果糖反応性CBAIJNマウス(CBA)と果糖低反応性DBA/2Nマウス(DBA)に対して、高果糖食群と対象食群に分けて4週間飼育させた後に肝臓を摘出した。CBAではDBAと比較して高果糖食により、(1)肝臓内脂質合成系遺伝子発現の亢進や血中中性脂肪値の上昇、(2)肝臓内O-GlcNAc修飾核蛋白発現やOGT遺伝子発現の増加、(3)肝臓内ヘキソサミン経路GFAT1遺伝子発現の亢進が認められた。以上のことより、マウス系統間での果糖摂取による肝臓内でのヘキソサミン経路やO-GlcNAc修飾の調節異常の変化が、脂肪肝や糖・脂質代謝異常の差異に関連していることが示唆された。2.小腸コレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブは、脂肪肝も改善させることが最近知られていることから、高果糖食摂取マウスにて誘導される脂肪肝にも改善効果を認めるかを検討した。4週令のCBAマウスに対して、高果糖食群と高脂肪食群および対象食群に分けて8週間飼育させた後に肝臓を摘出した。エゼチミブは、高果糖食および高脂肪食による肝臓SREBP-1cの活性を抑制し、高脂肪食による脂肪肝を抑制したが、高果糖食に対しては効果を認めなかった。
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