研究概要 |
本年も、引き続きSDHBを主とする褐色細胞腫の遺伝子解析を行った。また、最近同定されたmTORを負に制御しているタンパクをコードしているTMEM127の変異による褐色細胞腫について、新たな検出系を立ち上げた。結果、本邦の異なる地域からの両側副腎性褐色細胞腫2症例で、同一のTMEM127の変異(c.116_119delTGTC, p. Ile41ArgfsX39)を同定した。また、2症例の腫瘍組織を用いてフラグメント解析により、それぞれ第2染色体長腕のLOHを証明した。114例の健常日本人をhigh-resolution melting curve analysis (hrMCA)法でスクリーニングしたが、本変異は認められなかった。頻度は両側性の25%(2/8)、全体の2.7%(2/74)であった。同定した変異は4塩基の欠失によるフレームシフトで停止コドンが入る。本変異は既にブラジルの家系で報告されている。今回、それぞれの腫瘍組織でLOHを2qにわたりにフラグメント解析で証明した。さらにコントロールの健常な日本人には本変異は認めず多型は否定できた。以上より、TMEM127はガン抑制性遺伝子として働き、本変異は病因であると考えられた。頻度や臨床的な特徴も先行報告とほぼ一致した。本邦(のみならずアジア)における初めてのTMEM127の変異による症例報告である(Chnical Endocrinology, InPress)。 分子標的薬のSUNITINIBの基礎的な作用については、American Journal of Physiology Endocrinology and Metabolismに投稿して掲載された(下記参照)。
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