研究概要 |
慢性甲状腺炎に伴う自己免疫性橋本脳症の症例を国内外より集積し,橋本脳症の診断マーカーである抗NAE抗体,臨床徴候・検査所見・画像情報の収集・解析を行った.本年度は,橋本脳症の中でも小脳失調型に焦点を置き,臨床的特徴を明らかとするとともに,抗NAE抗体によるシナプス伝達に対する影響を生理学的に検討した. (a)多数症例の集積:平成23年度は,総数約250件(累積総数1350件)の抗NAE抗体の解析を行った.その内で,約16%に小脳失調を主徴とする病型が見出された. (b)小脳失調型の橋本脳症は,脊髄小脳変性症と類似した臨床像を呈するが,眼振を欠き,脳波の徐波化を伴い,頭部MRIで小脳の萎縮が乏しいという特徴を有することが明らかとなった. (c)東京医大の三苫博らとの共同研究により,NAE陽性小脳失調患者の髄液をラット小脳スライスに反応させることでプルキンエ細胞のシナプス伝達が阻害されることをパッチクランプ法で生理学的に示した.これによって,抗NAE抗体は,橋本脳症の診断マーカーであるばかりでなく,機能的に影響を及ぼす可能性が初めて示された.
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