研究概要 |
私共はこれまでの疫学研究の知見や骨粗鬆症治療の有効性を得るためには、適度な筋肉量や運動量が必要なことより、筋組織から産生され、骨形成的に作用する体液性因子が存在すると仮定し、研究を進めた。DNAマイクロアレイによる網羅的解析にて、マウス筋芽細胞株(C2C12)において進行性骨化性線維異形成症(FOP)の原因遺伝子ALK2(R206H)の過剰発現により発現が低下し、分化筋芽細胞で発現が維持される因子を筋組織から特異的に産生される骨形成因子の候補として抽出した。骨芽細胞や筋芽細胞を用いた機能解析により、筋から産生される骨形成因子の候補として、オステオグリシン(OGN)とFAM5Cを抽出した。マウス骨芽細胞(初代培養、MC3T3-E1細胞)において、recombinant OGN及び0GN安定過剰発現は1型コラーゲン(Col1),・-カテニン,アルカリフォスファターゼ(ALP)及びオステオカルシン(ocN)、石灰化を増加させ、siRNAによる内因性oGNの抑制は逆の結果を示した。C2C12において、OGNはBMP-2により増加するALP及びOCNレベルを抑制した。OGNはC2C12や筋管細胞に分化したC2C12培養上清及びヒト血清中に検出されたが、OGN過剰発現C2C12培養上清は骨芽細胞においてALP及びOCNレベルを増加させ、内因性OGN抑制C2C12培養上清は逆の結果を示した。FAM5Cについても、血清中に存在し、同様の結果であった。さらにMC3T3-E1において、OGNはERK1/2リン酸化、TGF-・が誘導する転写活性及びCol1産生を増強し、OGNのCollmRNAレベル増加作用は内因性TGF-・阻害剤で阻害されず、ERK1/2阻害剤により抑制された。今回の実験結果よりOGN及びFAM5Cは筋細胞から産生されて、血中に分泌され、分化した骨芽細胞で骨形成促進的に作用することが示唆された。 これらの因子は筋から産生されて骨アナボリック作用を有する因子の候補として初めての因子であり、さらにin vivoでの検討を進めたい。
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