研究課題
Ephrin/Eph系は種々のシグナル系に影響を与えることが判明してきている。EphA4KOマウスの体格がこの遺伝子の発現量に反比例して小さいことに関して、GH-IGF1系との関わりを調べた。昨年は、Epha4(-/-)マウス由来線維芽細胞にレトロウイルスベクターを用いてEphA4を発現させた細胞およびベクターのみを発現させた細胞を用いてGH受容体下流のシグナル分子の活性化を調べた。その結果、EphA4はGHRと結合することによりJak2より下流のシグナルを増強することを発見した。今回は、GHRのすぐ下流に存在するJak2のノックアウトマウス由来の線維芽細胞を使い、この細胞にレトロウイルスベクターを用いてJak2およびEpha4を発現させ、36時間後のIgf1 mRNA産生を調べた。Ephrin-A1による刺激後のIgf1 mRNA産生はJak2の発現を回復した細胞で高度に増強されていた。Jak2の発現無しでもephrin-A1に反応してIgf1 mRNA産生の増加がみられたが、その反応はJak2の発現を回復した細胞の10%にすぎなかった。以上から、ephrin/EphA4系のIgf1発現に及ぼす影響は大部分Jak2を介するシグナルによるものと考えられた。また、EphA4、GHRおよびJak2は3分子のどの2者も互いに結合することにより3量体を形成することをHEK293細胞での強発現にて確認している。In vivoにおいてもマウスの各種臓器におけるIgf1 mRNA、Ghr mRNA、Igf1r mRNAの発現を調べた。Igf1 mRNAは脳と腎臓を除く多くの組織において、野生型と比べてEpha4(-/-)マウスにおいて著明に減少していた。しかし、調べ得た全ての組織においてGhr mRNAおよびIgf1r mRNAの発現量には両者で差がなかった。調べた組織全てにおいてEpha4の発現を認めた。以上より、これまではIGF1産生の大きなシグナル経路としてGH-IGF1系が認められていたが、近接した細胞間で働くephrin/Eph系がGHRおよびJak2と共同して働くことにより、IGF1産生が制御されていることが明らかとなった。
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Genes Cells
巻: 15 ページ: 297-311
Bone
巻: 47 ページ: 534-541