研究概要 |
培養甲状腺細胞FRTL-5を2本鎖DNA(dsDNA)およびdsRNAで刺激し、一定時間培養後の自然免疫関連遺伝子や甲状腺機能遺伝子発現変化を解析した。その結果、interferon-beta, TNF-alpha, IL-6などのサイトカイン、CC12, CCL4, CCL5, CXCL9, CXCL10, CXCL11などのケモカインの発現が誘導されることを確認した。さらに、MHC class I, class IIの発現とともに、それらを誘導する転写共役因子RFX5, CIITAなどの発現も誘導された。甲状腺特異遺伝子では、thyroglobulinの発現が抑制され、sodium/iodide symporter(NIS)発現も弱く抑制されたが、その他の遺伝子発現に大きな変動は認められなかった。FRTL-5細胞における放射性ヨード取込みはdsDNA, dsRNAともに強く抑制した。非腫瘍性の甲状腺細胞において発現するmicroRNA(miRNA)はその量や機能ともに不明であることから、FRTL-5細胞に発現するmiRNAをDNAマイクロアレイによって網羅的に解析した。その結果、甲状腺細胞においても高レベルで発現するmiRNAが多数存在し、それらの一部は甲状腺刺激ホルモン(TSH)やthyroglobulinによって発現量が減少したことから、甲状腺において重要な働きをしている可能性が示唆された。これらが、上記サイトカインやケモカインなどの遺伝子を標的とするかどうかについて現在検討中である。また、外部からdsDNAをtransfectionにより細胞内に導入する事だけでなく、細胞傷害によって漏出するゲノムDNA断片も同様のdsDNA作用がある可能性が示された。
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