研究課題
培養甲状腺細胞FRTL-5に強い電荷をかけたり培養液を一時除去するなどして、病原体や免疫担当細胞の介在の無い状態下において細胞傷害を与えた。そのような細胞の細胞質分画をショ糖密度勾配遠心法によって精製し、そこからDNAを抽出し、分光光度計による定量、アガロースゲル電気泳動およびPCRによってゲノムDNA断片が漏出していることを証明した。さらに、その際に自然免疫や獲得免疫に関連するI型インターフェロン、炎症性サイトカイン、ケモカイン、MHC遺伝子などの発現が誘導されることをRT-PCRやreal-time PCRによって確認した。そのような遺伝子発現誘導は、細胞外から2本鎖DNA(dsDNA)をトランスフェクションした場合の反応と同様であった。次に、細胞質内2本鎖DNA認識機構を明らかにする目的で、dsDNAに結合するがssDNAには結合しないFRTL-5細胞の細胞質タンパクを調製し、質量分析による網羅的解析を行った。その結果、細胞質内dsDNA認識分子としてhistone H2Bが得られた。Histone H2Bをplasmid発現ベクターを用いて過剰発現させるとdsDNA刺激によるインターフェロン・ベータ遺伝子のプロモーター活性が増強し、逆にsiRNAでノックダウンすると減弱した。以上のことから、細胞傷害時に核から漏出するゲノムDNA断片が細胞質内histone H2Bによって認識され、その結果として自然免疫および獲得免疫反応が活性化されることが示された。以上から、外傷や虚血再灌流などの細胞傷害が自己免疫反応を開始するための誘因となる可能性が示唆された。
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