エネルギー代謝の恒常性維持に中枢神経系と肝臓の臓器間相互作用は重要な役割を果たし、主に迷走神経がその情報伝達経路を担っている。一方、肝損傷時の修復過程や肝細胞増殖制御における中枢神経系の関与については不明である。我々は、末梢性グレリンが迷走神経系を介して中枢神経系にそのシグナルを伝達し、肝細胞増殖調節や肝組織損傷時の修復制御に関与することを新たに見出した。 今年度の本研究では、70%肝部分切除ラットにおいて摂食量制限による肝再生能の低下とその代謝制御との関連について検討した。得られた結果は、(1)摂食量制限により肝切除後の肝再生能は抑制された、(2)摂食制限による糖代謝抑制が肝再生に関与、(3)グレリン投与により肝糖代謝の改善が認められた、である。肝再生能と糖代謝の関連が明らかとなり、グレリン前投与による肝代謝制御の変換が特に重要と思われる。また、グレリンによって活性化される中枢神経細胞(核)と肝細胞増殖作用との連関について機能解剖学的に解析を行ったが、肝細胞の増殖・分化に関わる調節中枢を同定するに至っておらず、現在進行中である。
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