研究概要 |
我々は、Bcl-2を高発現させたp53が正常なB細胞性白血病細胞株(697-Bcl-2細胞)を用いて、Bcl-2の抗アポトーシス作用を克服する薬剤を探索する研究をおこなってきた。この研究の過程で、興味深いことにBcl-2を高発現させた細胞では、抗がん薬を加えた場合にnon-apoptoticな細胞死が誘導されることを見いだした(Yoshida A et al. Cancer Res.66(11):5772-5780, 2006).具体的には、caspase-3/7, 8の活性化を欠如し、DNA ladderの形成も認められなかった。形態学的にも、アポトーシスに特徴的な核の断片化は欠如していた(Yoshida A et al. Cancer Res.66(11):5772-5780, 2006)。この細胞に抗がん薬であるエトポシドを加えた場合p53の発現上昇は認められたが、ミトコンドリアに存在するpro-apoptotic proteinであるPuma, Noxaの発現上昇は認められず、cytochrome-cの放出はなかった。したがって、Bcl-2高発現細胞では、ミトコンドリアをバイパスするユニークな経路で抗がん薬による細胞死が誘導されると考えられる。そこで我々は、抗がん薬であるエトポシドおよびボルテゾミブを加えてオートファジーの生化学的なマーカーであるLC-IIのプロセッシングを検索したところBcl-2を高発現させた細胞ではLC-IIのプロセッシングがウエスタンブロットにより認められた。MDC色素による検討でも、697-Bcl-2細胞にオートファジーが誘導されることが確認された。さらにBeclin-1の発現上昇が認められるかどうか、ウエスタンブロットで検討したところ、発現の上昇が認められた。
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