研究概要 |
骨髄増殖性疾患の分子病態においては、細胞質内チロシンキナーゼJAK2の恒常的活性型変異であるJAK2V617Fが中心的な役割を果たしている。我々は、これまでに、骨髄内の低酸素環境がJAK2V617Fの活性にどのような影響を及ぼすかについて解析を進めてきた。そして、以下の解析結果を得ている。 1. JAK2V617F陽性白血病細胞株であるHEL細胞およびSET-2細胞について骨髄内の低酸素ニッチとほぼ同程度の低酸素環境下(1%02)で培養することにより、JAK2V617Fの活性化が抑制された。一方、骨髄内の血管ニッチ付近の酸素レベル(5%02)ではJAK2V617Fの抑制はみられなかった。 2. 1%02環境下では、JAK2陽性細胞の増殖が抑制された。このさいにHEL細胞では、アポトーシス誘導タンパクであるBimの発現上昇と抗アポトーシスタンパクであるBc1-xLの発現低下がみられ、アポーシスが誘導された。一方、SET-2ではcyclinD2の発現低下とp27/Kipの発現が誘導され、その結果アポトーシスではなく細胞周期停止が誘導されることが分かった。 3. 低酸素状態により、JAK2を負に調節する分子の発現がどのように変化をするかについて検討を行った。これまでにSOCS-1,SOCS-3,PTP-1B,CD45などの分子の発現レベルを調べたが低酸素による変化は認めておらず、これらの分子の関与は否定的であった。今後さらに解析を進め、このメカニズムの解析を目指す。
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