我々は白血病細胞における接着シグナルの主な受容体であるインテグリンとその下流シグナル伝達につき研究を行ってきた。アフィニティクロマトグラフィーによりインテグリンβtailに結合する構造蛋白TalinにRac GEFであるTiam1が結合することを確認した。このことからTiam1がインテグリンシグナル直下にあり、細胞接着→生存シグナルへの変換に重要な役割を果たしている可能性が強く示唆された。さらに変異体を用いた結合実験によりTalin-Tiam1間の結合部位をアミノ酸レベルで同定した。Talinはインテグリン活性化に重要な役割を果たす一方、Tiam1を介して低分子量GTPase Racの活性化を仲介することが示唆された。一方血球特異的GTPase RhoHがRacを不活性化するメカニズムについては詳細不明であったが、今回我々はGST-RhoHをbaitとして、血小板細胞質画分を用いたアフィニティクロマトグラフィーを行い、LC/MS/MSを用いてRhoHエフェクターの同定を試みた。その結果RhoHの新規エフェクター候補の一つとしてT cell activated GAP(TAGAP)を同定した。TAGAPは活性型RhoHに特異的に結合し、細胞内のRacを不活性化した。RhoHはTAGAPのGAPドメインに結合する事が明らかになった。以上のことから白血病細胞の接着、生存のkey moleculeであるRacの上流制御機構が明らかになりつつある。
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