研究課題
我々は、造血幹細胞が骨髄微小環境の中で殆どが細胞周期の静止期と未分化性を維持しているそのメカニズムを明らかにするために、造血幹細胞の増殖、分化と環境の栄養状態との関係を明らかにする研究を行っている。平成21年度において正常マウス骨髄よりc-Kit^+Scal^+Lin^-CD34^-の造血幹細胞・前駆細胞分画を単離し、培地のグルコース濃度を0mg/dlから100mg/dlに変化させ、それぞれの条件における細胞の増殖率を計測したところ、グルコース濃度0mg/dlの条件では生存を維持できなかったが、20mg/dl以上で5日以上生存を維持し、60mg/dl以上では増殖率に差がなかった。また、増殖後3日でのKSL分画の比率を調べたところ、40mg/dlで最も多くの細胞がKSL分画にとどまっていることが示された。さらに、daughter cell colony assayを行い、それぞれの条件下における分裂の周期と、対称分裂の比率を計測した。その結果、40mg/dlの条件で最も細胞分裂の周期が長く、また、対称分裂の比率も高かった。また、それぞれの条件下での細胞一個あたりの細胞内ATP濃度を測定したところ、環境のグルコース濃度に比例して細胞内のATP濃度が上昇していた。以上のことからエネルギー代謝の状態は、環境の栄養状態の影響を受け、細胞周期の調節と対称/非対称分裂の確率の調製の両面で造血幹細胞の未分化性の維持に関わっていると考えられる。造血幹細胞を維持するニッチにおいては酸素濃度が低いとされているが、環境のグルコース濃度の影響をも受けている可能性が考えられる。
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