血液細胞の分化増殖への関与が報告されている転写因子c-mybの細胞の運命決定に於ける量的な関与を明らかとするために内因性c-Mybタンパク質のモニター可能なc-mybレポーターマウス作成を行い、樹立に成功したことを昨年度報告した。本年度は、このマウスからホモ接合体c_mybレポーターマウスが安定的に維持できる事を確認した。この点は、レポーター遺伝子による負の作用が生じていないことを示しており、レポーター遺伝子が正確に内因性c-Mybをモニターしていることを示している。そこで、このc-mybレポーターマウスを用いて、以下の研究を行った。 血液幹細胞からリンパ球系譜に分化する際に、最も幼弱な細胞画分には、c-Myb陽性と陰性の細胞画分があることを見出した。また、その他にも様々な前駆細胞にc-Myb陽性と陰性の画分が存在し、これらの点はこのマウスの樹立により初めて明らかとなったことである。また、殆どの血液幹細胞は、c-mybを発現していた。そこで、これらを陰性~弱陽性および強陽性に分画し、細胞移植により機能的差異の検討を行った。レシピエントマウスにおける末梢血キメリズムで、有意な差が見られた。さらに、ドナー由来細胞の細胞系譜は、両者で異なっていることが、明かとなった。現在、血液幹細胞移植を効率的に行うためにc-mybレポーターマウス(CD45.2)をCD45.1に置き換えることを行っている。
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