本研究の目的は、生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを作成し、造血器腫瘍治療のマウスモデルを樹立することである。特に、造血器腫瘍に対する分子標的療法として(1)NK細胞のADCC活性を利用した免疫療法、(2)モノクローナル抗体を用いた免疫放射線療法、(3)薬物療法特にNF-kappaB阻害薬、の3つに焦点を絞り、治療モデルを作成することを目的に研究を行っている。 平成22年度は、蛍光イメージングに最適化されたマウスを樹立し、特許を申請した。本マウスは、無毛で、高度免疫不全を呈しているため、様々なヒト腫瘍細胞株の生着が可能であった。また、ヌードマウスと比較して腫瘍の増大速度は非常に早いことが観察された。特に赤色蛍光物質mCherryを遺伝子導入した胆管細胞癌株は、皮下摂取により大きな腫瘍を形成し、生体イメージング装置により、体外から腫瘍の同定が可能であった。このことは、マウスが生きたまま経時的に腫瘍量の測定が可能であることを示しており、今後ヒト悪性腫瘍の病態解析や治療薬開発に非常に有用なツールになり得ることを示している。また、以前に樹立した高度免疫不全マウスを用いて胆管細胞癌の治療モデルを確立し、胆管細胞癌にセファランチンとビタミンD3が有効であることを示した。また、Primary effusion lymphomaマウスモデルにおいてNF-kappaB阻害剤が有効であることを示した。 平成23年度は、治療モデルを作成して、更に検討を行う予定である。
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