本研究の目的は、生体イメージングに最適化された高度免疫不全マウスを作成し、造血器腫瘍治療のマウスモデルを樹立することである。特に、造血器腫瘍に対する分子標的療法として1.NK細胞のADCC活性を利用した免疫療法、2.モノクローナル抗体を用いた免疫放射線療法、3.薬物療法特にNF-kappaB阻害薬、の3つに焦点を絞り、治療モデルを作成することを目的に研究を行った。 平成23年度は、高度免疫不全マウスにPrimary Effusion Lymphoma (PEL)を移植したPELマウスモデルを用いて、Berberine及びDiethyldithiocarbamateのPEL治療における有用性を示した。更にBerberineとDiethyldithiocarbamateは、NF-kappaB阻害作用を有していることを証明した。PELは通常の抗腫瘍薬に耐性で予後不良であることから、新規治療薬として期待される。 また、HairelessマウスとRag-2欠損マウス・Jak3欠損マウスを交配して、Hairless Rag-2/Jak3二重欠損マウスを樹立した。本マウスは、高度免疫不全状態にあることからヒト腫瘍の生着が良好であり、無毛で皮膚が薄いことから生着した腫瘍の蛍光イメージングによる同定が容易であるという特徴を有している。本マウスに悪性黒色腫細胞株を移植したところ、体外から同定可能な黒色の腫瘍が認められた。今後本マウスに蛍光標識した様々な造血器腫瘍を移植して、生体蛍光イメージング装置を用いて腫瘍量を定量するシステムを構築し、造血器腫瘍の動態解析や抗腫瘍薬の有効性の検討に使用したいと考えている。また、本マウスは造血器腫瘍以外にも様々な固形腫瘍のマウスモデル構築も可能であり、今後ヒト悪性腫瘍の病態解析や治療薬開発に非常に有用なツールとして期待される。
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