AML1/Runx1遺伝子変異による白血病発症機構解明の一助として、ラントドメインの点突然変異をノックイン導入したヘテロマウスに対しMOL4070LTRウイルスを感染させ、発症した造血器腫瘍からゲノムDNAを抽出した後、その挿入部位の検索を行った。これまでの検討ではリン酸化酵素遺伝子、脱リン酸化酵素、細胞表面レセプター、転写因子、接着因子などが含まれていたが、同時に、未知遺伝子の近傍に挿入した例も認められた。現在、その疾病発症上の意義について検討を進めている。 またAML1のリン酸化修飾がその造血制御や白血病発症に与える影響を探る目的で、リン酸化残基の変異体の作製と解析を行っている。6箇所の既知リン酸化部位と7箇所の候補リン酸化部位のうち、ラントドメイン下流の2箇所を変異させても生物作用に影響を観察することができなかった。現在、このすべてを変異させた多重変異体を作製しており、この多重変異体の活性との比較の上で各リン酸化変異体の系統的解析へと検討を展開したい。 加えて、yeast two-hybridスクリーニングによるAML1と蛋白間相互作用する分子の系統的把握を試みている。AML1のC末端をベイトとし約200万クローンのマウスcDNAライブラリーを探索したところ、数十個の一次陽性クローンを得て、現在その特異性の検討を行っている。 上述のような多面的アプローチによって、今後、造血発生制御や白血病発症のメカニズム解明の上で有用となる多くの知見が得られるものと期待される。
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