研究概要 |
本年度試みた研究成果は下記の通りである。 1、サリドマイド結合蛋白質の同定:サリドマイド自体の生物活性は低く、その代謝産物が抗腫瘍効果を発揮すると考えられている。そこで、それ自体が骨髄腫細胞増殖抑制作用を有する活性型サリドマイド誘導体を合成し、in vitro virus法を駆使して骨髄腫細胞株mRNA-蛋白質ライブラリーよりその結合分子の同定を試みた。候補結合蛋白質が数種同定され、この中には細胞分裂に重要な分子も含まれており来年度以降絞り込みを行う。 2、可溶性受容体を用いたハイリスク骨髄腫の克服:t(4;14)染色体転座を有しFGFR3の過剰発現示す患者は、治療抵抗性で予後が悪くハイリスク症例と呼ばれる。KMS11および34細胞はt(4;4)を有しているが、これらに対して可溶性受容体(sFGFRlb-IIIc)を用いた分子標的を行い、ハイリスク骨髄腫の克服をめざす。本年度はまず、FGFおよび受容体群の発現を検討した。その結果、FGF-1,2およびFGFR1,2,4はいずれの細胞株においても遺伝子発現を認めた。特にKMS28細胞は培養上清中に多量のFGF-2を分泌する。FGFR3は、t(4;14)を有するKMS11,26,28,34細胞にのみ遺伝子産物の発現を認めた。また可溶性受容体は、代表的なFGFファミリーであるFGF-1(acidic FGF)、FGF-2(basic FGF)の増殖刺激を用量依存的に阻害した。これらの事実に基づき、可溶性受容体がin vitroにおいてKMS34細胞の増殖を抑制することを見出した。 3、分子標的薬による骨病変治療効果:本年度は、マウス破骨細胞および骨芽細胞の分化誘導の系を習得し確立した。次年度は、骨切片を用いた培養系も確立し、可溶性受容体や新規薬剤による直接の破骨細胞分化抑制および骨芽細胞活性化ついても検討を進める。
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