研究課題
(1)サリドマイド結合分子の同定:サリドマイド自体は生物学的活性が乏しく、その代謝産物が重要とされる。そこで、柳川、服部は、これまでにin vitroにおいてもt(4;14)陽性かつTP53遺伝子を欠失するハイリスク骨髄腫細胞KMS34に対して、強い抗腫瘍活性を有する新たなサリドマイド誘導体を見出している。これを用いて、柳川らが開発した結合蛋白質のcDNAクローニング法であるIn Vitro Virus法(IVV法)により、その結合する分子群を追求した。その中には、細胞分裂期に重要な分子が含まれていた。さらにこの分子をRNA干渉によってノックダウンすると、骨髄腫細胞の分裂が障害されアポトーシス誘導に陥ることが観察された。昨年サリドマイドの催奇形性にかかわる標的分子としてCereblonが分離されたが、抗腫瘍効果は別の分子を介して引き起こされると推測される。(2)可溶性受容体を用いたハイリスク骨髄腫の克服:t(4;14)陽性のハイリスク骨髄腫株に可溶性FGF受容体蛋白(sFGFR1b-IIIc)を添加して培養を行ったところ、統計学的有意差には至らなかったが増殖抑制が観察された。さらに、アデノウィルスベクターを用いてKMS34細胞他にsFGFR1を遺伝子導入したところ有意な増殖抑制が認められた。KMS34坦癌マウスへのsFGFR1遺伝子導入を開始した。(3)骨病変治療効果の検討:M-CSF,RANKL存在下でのマウス破骨細胞の培養系において、上述の我々が見出した新たなサリドマイド誘導体を添加すると、抗腫瘍効果を示すよりも低い濃度(0.5μM)にて分化抑制が認められた。さらに、骨基質吸収系においても抗腫瘍効果を示す濃度(3μM)にて、破骨細胞の活性が抑制されることがわかった。すなわち、同化合物は抗腫瘍効果と共に骨病変配膳効果を有することが期待され、破骨細胞における結合分子の解析が今後重要となる。
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Int J Hematol.
巻: 93 ページ: 129-131
臨床血液
巻: 51 ページ: 1499-1510
http://www.pha.keio.ac.jp/laboratory/laboratory13.html