研究課題
【研究成果】チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)投与後に生じる慢性骨髄性白血病(CML)細胞のCXCL12/CXCR4シグナル活性化のメカニズムとインテグリンシグナルの変化を明らかにした。【具体的内容】(1)骨髄間質細胞(MSC)共培養条件下でチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を投与したCML細胞では、MSCへの遊走能の亢進を認めた。その際、細胞表面上のCXCR4発現が上昇したが、細胞中のCXCR4総蛋白量は変化せず、TKIがCXCR4のCML細胞膜上分布に影響を及ぼすと考えられた。(2)TKI投与によってCML細胞中の活性型Lyn(p-Lyn^<Tyr396>)は抑制され、MSC共培養下で部分的に回復した。(3)膜上脂質ラフト内でCXCR4と活性型Lynの発現が認められた。(4)CXCL12/CXCR4依存性遊走能は、脂質ラフトの破壊やLyn阻害によって抑制された。(5)TKIによってCML細胞の接着能は変化しなかった。以上の結果より、TKIは、骨髄間質細胞共存下のCML細胞中の骨髄間質細胞への遊走能亢進に作用し、脂質ラフトとLynがCXCL12/CXCR4シグナル依存性の細胞遊走に関わると考えられた。脂質ラフトの破壊やLyn阻害が、CML前駆細胞の骨髄間質細胞への遊走を抑制し、骨髄微小環境内でのCML細胞の残存阻止に作用する可能性が示唆された。【意義】当該研究によって、TKI治療後に生じるCML細胞のCXCL12/CXCR4シグナル活性化のメカニズムの一端が明らかになった。CML前駆細胞の骨髄残存阻止に有効な分子標的療法として、CXCR4の直接阻害のみでなく、Lyn阻害が有効であることが示唆され、さらに脂質ラフト内のコレステロール成分が新たな標的となりうる可能性を示した。
すべて 2011
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Br J Cancer
巻: 104 ページ: 91-100