我々は、まずマルトリンパ腫の転座点18q21の領域から新規遺伝子MALT1を単離し、引き続き、このリンパ腫に高頻度に認められるt(11 ; 18)転座の実態がAPI2-MALT1キメラ分子の形成にあることを実証した。その後一環してAPI2-MALT1キメラ分子に関する分子生物学的ならびに臨床病理学的研究を展開してきた。本研究は、API2-MALT1キメラ分子の下流シグナル伝達系、特に申請者自身が実証した細胞死抑制の分子機構を解析し、最終的には、その基礎的研究成果に立脚した分子標的療法を目指した臨床応用を図ることを目的としている。次いで、API2-MALT1は、生理的なBCL10/MALT1抗原受容体シグナル経路をバイパスすることによって、抗原非依存性にNF-κBを活性化することを明らかにした。さらに、申請者はAPI2-MALT1が細胞死抑制を発揮する分子メカニズムとして、抗原受容体シグナル伝達経路をバイパスすることでNF-κBを活性化する経路とSmac等のアポトーシス制御分子に直接会合することで会合分子の機能を阻害する経路の二つの独立した経路が働いていることを明らかにした。今後は、API2-MALT1の下流シグナル伝達系ならびにNF-κBを介した標的遺伝子のさらなる探索を行い、分子標的治療開発へ向けて研究を継続したい。
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