研究概要 |
血小板は病的血栓形成において中心的細胞である.心筋梗塞などの病的血栓症の治療予防法のさらなる改良および改善のためには,血小板の基礎的研究が欠かせない.研究代表者は本年Rac活性化分子DOCK5のC末端に対する抗体の特徴づけをした.この抗体は血小板や様々な細胞を用いた結果から,人,マウス,犬など,様々な種の内因性DOCK5を認識する.大変興味深いことに,全長型のFLAG標識DOCK5をCos7細胞に発現させると,この抗体はcortical actinの共局在するDOCK5を認識することが判明した.DOCK180ではactin結合タンパクERMファミリーとの間接的結合が言われている.DOCK5でも同様でしかも局在化に関連することが強く示唆された.すなわち,この種を超えた新規DOCK5抗体は,ERMファミリー結合DOCK5のみ細胞染色では認識する可能性があり,当該分野の研究発展に寄与することが期待される.また,DOCK5とERMファミリータンパクの結合という新規研究分野の開拓も期待されよう.さらに,研究代表者は東大医科学研究所江藤浩之博士らと,共同で,多様な手法を駆使して,血小板低分子量Gタンパクの制御と関係の深い,インテグリン下流のシグナルにLNKタンパク質があることを発見し,JCI誌上にその成果を報告した(2010年).代表者は本研究課題の申請書に忠実に則り,血小板のRacなどの低分子量Gタンパクおよびその調節因子に関して一定の成果を挙げた.
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