研究概要 |
A549(ヒト),Hela(ヒト),C2C12(マウス),MDCK(イヌ)細胞において,興味深い知見が得られた.cDNAの予想配列に基づきDOCK5のN末端に対する特異抗体を作製した.この抗体は,COS7細胞に強制発現させたDOCK5は当然,強く認識する.この抗体は,予想通りC2C12,MDCK細胞では内因性のDOCK5も認識する.ところが,ヒト血小板でもHela細胞でも,この抗体は全く内因性のDOCK5を認識できないのである,既に作製済みのC末端に対する抗DOCK5抗体は両者で予想分子量のタンパクをWestern Blottingで認識するので,ヒトでは既存のデータベースにないDOCK5が,血小板のみならずHela細胞にタンパクレベルでは優位に発現しているという全く新しい知見が得られた.したがって,この優位に発現するヒトDOCK5のcDNAクローニングをしなければならないことになった.ところが5'RACEを試みたところ大腸菌のDNAと一部組替わってしまうことがわかった,そこで,これを解決するために,この組替わりが置き難い特殊な大腸菌(SURE2)を利用して検討し,大腸菌由来ではない配列が得られるようになった.また,既報では血小板にも発現する別のracの活性化因子βPIXがミオシンIIa重鎖と結合し,しかもβPIXのrac活性化能を抑制するとされている.ところが,申請者はミオシンIIa重鎖とDOCK5やDOCK180が結合できないことを見出した.すなわち,通常,血小板βPIXはミオシンIIa重鎖による制御を受け,DOCK5やDOCK180はその制御を受けない.ところがミオシンIIa重鎖の異常により,βPIXは抑制が解かれて,DOCK5やDOCK180とのアンバランスが生じることによる.Racは細胞骨格の制御に必須のタンパクであるので,その制御の異常が巨大血小板の生成に関与する可能性が示唆された.
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