東京大学医科学研究所附属病院では、1983年から2009年末までに634例の同種移植を行っており、移植細胞ソース別の内訳は、血縁ドナーからの骨髄移植が294例(46%)、末梢血幹細胞移植が32例(5%)、非血縁ドナーからの骨髄移植が99例(16%)、臍帯血移植が209例(33%)であった。この中で、1997年以降の移植例の成人患者で初回移植例、かつTBIを含む標準的前処置を用いた症例は284例であった。生着を好中球(500/μL以上)でみると、血縁ドナーからの骨髄・末梢血幹細胞移植症例77例中76例(99%)で生着を認め、生着日の中央値は17(10-35)日、非血縁ドナーからの骨髄移植症例52例中50例(98%)で生着を認め、生着日の中央値は18.5(12-33)日であった。一方、臍帯血移植症例155例中143例(92%)が生着し、生着日の中央値は22(16-46)日であった。また、上記の中で悪性疾患274例を対象に移植後の再発率を検討したところ、移植後5年での累積再発率は、標準リスク群(N=117)では血縁ドナーからの骨髄・末梢血幹細胞移植症で11%、非血縁ドナーからの骨髄移植で28%、臍帯血移植では15%であった。また、進行病期(N=157例)では、血縁ドナーからの骨髄・末梢血幹細胞移植症で37%、非血縁ドナーからの骨髄移植で44%、臍帯血移植では27%であった。以上の臨床解析から、臍帯血移植の生着は他ソースに比べ生着率が低く、回復の速度が遅いこと、一方で再発率は高くはないことが示された。 また、臍帯血移植後に重症GVHDを発症した患者ではGVHDの重症化に伴い、TNF-α、Kit-リガンド、可溶性IL2受容体の血中濃度が上昇しており、α2PIプラスミン複合体の血中濃度上昇、プラスミノーゲン血中活性の低下を認めていた。現在、さらに移植後炎症性および非炎症性微小血管障害などについて、これらのサイトカインおよび繊維素溶解系を指標とした病態解析を進めている。
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