研究概要 |
本研究の目的は、がん監視機構や自己免疫疾患の疾患感受性・感染免疫・同種移植への影響が示唆される免疫関連遺伝子多型を解析し、移植成功率が最も高くなる最適ドナーを選ぶことに加え、移植後合併症を予測し、適切に対処することである。本年度は、Granzyme B(GZMB)がTリンパ球による細胞傷害活性の中心を担っていること、1塩基多型(SNP)(rs7144366,A295G)がGranzyme B誘導能に関与することに着目し、同種造血幹細胞移植におけるGranzyme B遺伝子多型の影響を解析した。対象は、HLA-A/B/C/DRB1/DPB1/DQB1一致非血縁者間骨髄破壊的前処置骨髄移植を受けた前移植歴の無い血液がん患者とそのドナー613組。試料(DNA)と臨床情報は、日本骨髄バンクおよび金沢大学医学系研究科の倫理委員会の審査・承認を得た上で、日本骨髄バンク検体・データ保存事業で収集された非血縁者間同種骨髄移植患者・ドナーのDNAおよび臨床情報を使用した。免疫関連遺伝子多型は、TaqMan SNP遺伝子型解析法により決定し、GG/AG遺伝子型vs.AA遺伝子型で比較検討した。骨髄系腫瘍(急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群)353例において、GG/AG陽性ドナーからの移植は、生存における有意な予後良好因子であった(ハザード比0.65・95%信頼区間0.43-0.97・P=0.04)。GG/AG陽性ドナーからの移植は、移植関連死亡を有意に低下させた(ハザード比0.45・95%信頼区間0.25-0.82・P=0.01)。再発率に有意な影響はなかった。この影響は、リンパ系腫瘍(急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫)260例ではみられなかった。以上から、免疫関連遺伝子多型解析は、同種造血細胞移植治療成績向上に役立つことが示された。
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