本研究の目的は、がん監視機構や自己免疫疾患の疾患感受性・感染免疫・同種移植への影響が示唆される免疫関連遺伝子多型を解析し、移植成功率が最も高くなる最適ドナーを選ぶことに加え、移植後合併症を予測し、適切に対処することである。本年度は、IL-17とCXC-motif chemokine 10 (CXCL10)の一塩基多型(SNP)解析を行った。まず、IL-17プロモーターSNP(rs2275913)の移植免疫上の役割を明らかにするため、同種骨髄移植への臨床的検討と機能解析を行った。多変量解析上197A/Aまたは197A/G陽性ドナーから移植を受けた患者のII-IV度急性移植片対宿主病(GVHD)発症率は有意に高かった。健常人197Aアリル陽性Tリンパ球は、197Aアリル陰性Tリンパ球に比べ、IL-17発現が亢進していた。さらに、197Aアリルは197Gアリルより、プロモーター活性と親和性が高かった。以上から、IL-17プロモーターSNPは機能的なSNPで、転写因子との結合性によりIL-17遺伝子発現を調整し、GVHD発症に影響していると考えられた。CXCL10 SNP (rs3921)の臨床解析では、低リスク患者において、患者がCXCL10GGまたはGC GG/GC)型の場合、CC型を有する患者より生存率は有意に良好であった。健常人17名(GC17名、GG6名)のリンパ球を解析したところ、GC型はCC型よりCXCL10蛋白の誘導能が高かった。以上から、(1)CXCL10 SNP (rs3921)は機能的SNPであり、Gアリル保有者はGアリル非保有者に比べCXCL10誘導能が高いこと、(2)そのようなCXCLI10高誘導能アリルを有する患者は、HLA一致非血縁者間同種骨髄移植が成功しやすい可能性が示唆された。これらの知見は、移植予後予測に加え、移植関連合併症予防・治療法の開発に有用と考えられた。
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