研究概要 |
ヒト骨髄環境におけるリンパ球系細胞の分化を明らかにするために、まず、ヒト骨髄由来不死化スとローマ細胞がリンパ球系細胞の分化を支持するか検討した。(1)サイトカイン無添加にて、20%FCS α-MEM培地で3週間培養することにより、CD34^+あるいはCD34^+CD38^<lo/->CD7^-CD19^-ヒト臍帯血造血前駆細胞からCD34^-CD7^+cytCD3^-ProT細胞、CD34^-CD19^+CD79a^+VreB^-ProB細胞の生成が支持されること、(2)SCF,TPO,Flt3L,IL-7,G-CSFをそれぞれ単独で培地に添加すると、Flt3LのみがProTおよびProB細胞の生成を促進すること、などが明らかとなった。造血前駆細胞から、TおよびB細胞系細胞の両方を効率よく支持する培養系はこれまで報告されておらず、この培養系を用いることにより、ヒトリンパ球の初期分化を詳細に検討することが可能であることが示された。現在、Flt3Lが、初期T及びB細胞分化のどの段階で、どのような役割を果たしているのか、添加実験や受容体発現などにより詳細に検討を進めている。 一方、SCFやTPOは、それ単独ではProTやProB細胞の生成にほとんど影響しないが、SCFとTPOの両方を添加すると、Flt3L非存在下でもProTやProB細胞の生成を促進した。これらのサイトカインは、FCSに含まれる、あるいはストローマや造血細胞自身が産生するFlt3Lと協調して作用している可能性もあり、現在、中和抗体やinhibitorを用いて検討中である。また、これまで、リンパ球系細胞分化におけるTPOの役割についてはほとんど検討されておらず、このような視点からも、これまで明らかになっていなかった新知見が得られつつある。
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