研究課題
血小板機能はポジティブおよびネガティブ機構により制御されている。本年度の成果として血小板アゴニストとして重要なトロンボキサンA2(TXA2)の受容体異常症およびαIIbss3遺伝子異常に伴う先天性血小板減少症を新たに同定し、その分子機構の解析を行った。TXA2受容体異常症としては、現在まで2種類のミスセンス変異が報告されているのみであり、そのキャリアー(ヘテロ体)においても血小板機能異常を呈する。この機序として、ミスセンス変異がドミナントネガティブに受容体機能を抑制している可能性が指摘されていた。報告者は、新たにc.167dupG遺伝子異常のヘテロ体を同定した。この遺伝子異常によりTXA2受容体は欠損する。事実、発端者は正常のTXA2受容体の発現が約50%に減少しているのみであるが、血小板機能の異常が観察されたため、ドミナントネガティブの作用は否定的である。受容体が50%に減少すると血小板機能異常が誘導される機序として、TXA2受容体の半減により血小板放出反応が傷害され、血小板からのADP放出の低下を来すことが一因であることが明らかになった。また、同じ遺伝子異常を有する父親には出血傾向はなく、TXA2受容体の半減のみでは出血症状を来さないことが示唆された。さらに本年度においてαIIbの細胞内領域におけるαIIb(G991C)を有する遺伝性血小板減少症を見いだした。血小板は大型で、血小板数は3万/μLに低下していた。293T細胞に発現させたαIIb(G991C)β3は恒常的に活性化されていた。報告者らは、すでにαIIb(R995W)が血小板減少を来すことを見出しており、これらの結果より、αIIbβ3の活性化異常が血小板数および形態異常に関与する可能性が示された。
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