研究課題
宿主抗原提示細胞からのアロ抗原提示によってドナーリンパ球の急激な増殖と、それに続く体内でのサイトカインの急激な上昇により、移植片対宿主病(GVHD)が発症する。GVL効果を保持したGVHD制御には、この急激なドナーリンパ球の増殖を抑えることが重要であると考えられる。GVHDとGVLはともに抗原提示細胞からのアロ抗原提示を認識し活性化すが血液系細胞以外の細胞に発現するアロ抗原がGVLにどのような影響があるかはいまだ、明らかとなっていない。マウスモデルを使い調べたところ、上皮系細胞に発現するPD-1によりドナー細胞がアポトーシスを起こし、GVL効果を減弱させることがあきらかとなった。また、移植後期に発症する慢性GVHDは急性GVHDと発症時期が異なるだけでなく、その病態も異なると考えられている。慢性GVHDは、移植細胞により免疫が再構築される段階で、自己抗原反応性T細胞が出現し自己免疫疾患に類似した臨床像を呈すると想定されている。慢性GVHD後のサイトカインをまず検討し、IL-17 IFN-gammaを産生するドナー細胞が増加していることを明らかとなった。IL-17欠損マウスによって慢性GVHD発症が抑制されるかを検討したところ、慢性GVHD発症が抑制されTh17細胞の関与が示唆された。また、IFN-gamma欠損マウスによっても慢性GVHD発症が抑制されIL-17、IFN-gammaの関与が示唆された。そこでIL-17、IFN-gammaを低下させるAm80を移植後投与したところ慢性GVHD発症が抑制され、発症予防、治療効果が認められ、新たな治療薬としての可能性が示唆された。
すべて 2010
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J Clin Invest.
巻: 120 ページ: 2370-2378