研究概要 |
白血病細胞傷害性Tリンパ球(CTL)はT細胞受容体(TCR)を介して白血病細胞表面上の「主要組織適合性抗原(HLA)とがん抗原複合体」を特異的に識別することで、正常細胞を避けて白血病細胞を特異的に攻撃・傷害出来る。従って、このTCRをコードする遺伝子を正常T細胞へ導入することで「白血病特異的傷害活性」も移入出来る。我々は、白血病性幹細胞に過剰発現している腫瘍抗原WT1(HLA-A*2402拘束性)とAurora Kinase A (AURKA)(HLA-A*0201拘束性)を認識するTCR遺伝子をクローニングして、特にWT特異的TCR遺伝子は治療的TCR発現効率を向上させたレトロウイルスベクター(siTCRベクター)を用いて、正常T細胞にそれぞれ遺伝子導入した人工CTLを作成し、詳細な前臨床試験を実施して、臨床応用できる可能性を示した(WT1-siTCR ; Blood 2011, AURKA-TCR ; 2012)。現在、輸注後の患者体内での抗白血病効果を増強する目的で、TCR遺伝子改変したCD4陽性T細胞の機能を詳細に検討し、国内外の学会で発表すると共に、論文化を進めている。同時に、生体イメージング技術を用いて、ヒト白血病性幹細胞の細胞周期とTCR遺伝子改変人工CTLの細胞傷害活性の相互関係を微速撮影(Time lapse)法を用いて試験管内で解析して幾つかの治験を得た。また、細胞周期イメージングと発光イメージングを施した白血病細胞を免疫不全マウスに経静脈的に輸注した後の骨髄生着を追跡し、加えてTCR遺伝子改変T細胞を用いて治療モデルを作成して抗白血病性幹細胞効果の検討を検討している。さらに、既知の白血病抗原を認識するTCR(ここではWT1とAURKA)を導入したTリンパ球のTCRシグナルの可視化プローブを作成して、白血病患者から採敢して標識した白血病性幹細胞の骨髄内局在を含めた動態、白血病細胞傷害性CTLの輸注後動態、白血病認識と傷害活性の発揮され方を詳細に検討する系を構築しつつある。
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