顆粒球は感染の最前線で病原体を駆逐するために機能する重要な血球成分の一つである。顆粒球の減少は直ちに宿主を易感染性状態に陥る一方で、過剰な顆粒球産生も肺障害をもたらすなど臨床的にも顆粒球数の調節を理解することは重要な課題である。顆粒球の寿命は24-48時間と非常に短いため骨髄および末梢組織からの貯留プールからの動員に加えて骨髄での産生調節の意義は大きい。申請者はこれまでに感染などで分化成熟した多数の顆粒球を産生する状況では転写因子C/EBP βが重要な働きをしていることを明らかにした(Hirai H. et al. Nature Immunology 2006)。本研究ではこの転写制御の変化が感染における顆粒球造血のダイナミックな変化にどのような意義を持つかを明らかにして、感染症における生体防御のメカニズムの一端を解明するとともに感染の病態制御に結びつけることを目的とする。 本年度は、フローサイトメトリーを用いて造血幹細胞から成熟顆粒球にいたる分化段階を同定・分離する手法を樹立し、真菌であるCandida albicansの敗血症モデルの解析に応用した。各細胞集団の数の変化から、未分化な細胞集団での細胞増殖による顆粒球の産生応答が存在することが予想された。感染24時間後の細胞周期の変化をBrdUの取り込みによって評価したところ未分化な細胞集団でのS期の頻度が増加していた。感染24時間後ではC/EBP βのmRNAレベルの発現はあまり変化しないが、タンパク質レベルでは発現が有意に亢進していることも確認できたため、このC/EBP βの発現レベルの変化が細胞周期の亢進とどのような関連があるかをノックアウトマウスで確認する予定である。
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