研究課題
申請者はこれまでに感染などで分化成熟した多数の顆粒球を産生する状況では転写因子C/EBPβが重要な働きをしていることを明らかにした(Hirai H.et al.Nature Immunology 2006)。本研究計画の成果により、これまでにマウス骨髄中の顆粒球分化の過程をフローサイトメトリで5つの亜分画(未分化なものから順に#1~#5)に区分できることを明らかにした。本年度はまず、緊急時に顆粒球分化のどの段階でC/EBPβの発現が変化しているかについて検討した。興味深いことにリアルタイムPCRで検討したところC/EBPβは#1で低く、顆粒球分化が進行するにつれて高くなる発現パターンを示した。Candida albicans感染により#1~#5のいずれの亜分画でもC/EBPβの発現に有意な変化は認められなかった。そこで感染前後の各亜分画のタンパク質を抽出し、抗C/EBPβ抗体を用いてウェスタンプロッティングを行った。タンパク質レベルでは#1~#5のすべての亜分画でC/EBPβの発現亢進が認められ、C/EBPβは感染に対して転写以降のレベルで制御されていることが示唆された。上述のC/EBPβの発現レベルの変化が感染時の顆粒球造血においてどのような意義を持つかについてC/EBPβのノックアウトマウスを用いて検討した。定常状態の顆粒球造血においてノックアウトマウスは野生型と亜分画の頻度に差は認められなかったが、感染により野生型で観察される#1および#2の増加と#5の減少がノックアウトマウスでは認められなかった。細胞周期の解析では感染後のノックアウトマウスでは#1および#2の亜分画でBrdUが野生型マウスに比して低い傾向が認められたが、その差は有意ではなかった。以上の結果からC/EBPβは感染に際して転写以降のレベルで調整されて発現が亢進し、顆粒球の増殖と分化を制御している可能性が示唆された。
すべて 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Cancer Sci
巻: 102 ページ: 591-596
DOI:10.1111/j.1349-7006.2010.01813.x
Eur J Immunol
巻: 41 ページ: 67-75
DOI:10.1002/eji.200939931
Cancer Letter
巻: 116 ページ: 2089-2095
10.1016/j.canlet.2011.08.009
巻: 312 ページ: 91-100
10.1016/j.canlet.2011.08.002
http://dtm.kuhp.kyoto-u.ac.jp/