研究課題
AAVベクターキャプシドに対する中和抗体の検出法の感度を向上させるため、関連する諸条件の検討を行った。このためには少ないベクター量で感染を成立させることが有益と考えられることから、感染の増強法につき検討した。その結果、感染に際して様々な糖類を培地に添加させることで感染効率の増強が認められることを見出した。また、用いるレポーター遺伝子と検出系の感度を最大にするべく、ルシフェラーゼ遺伝子などに関して検討を行ったところ、β-ガラクトシダーゼをONPGアッセイで検出する系が最も鋭敏であり、しかも結果の安定性及び再現性に優れていることが判明した。以上により、中和抗体検出系に関してはおおむね最適化が終了し、これまでの報告を大きく凌駕する感度の検査法を確立したと考えられた。過去の検査法で陰性と考えられた血清に関しても改良法で陽性となる例が散見されることから、本検査法は低力価陽性の個体を見出す上で有用と考えられる。爾後は実際の血清サンプルを対象にした測定を行った。医薬基盤研・霊長類研究センターにおけるカニクイザル血清試料を用いて測定した結果、大部分(76.8%及び69.5%)のサルが8及び9型に対して中和抗体陽性であった。このため、AAVベクターの血管内投与に基づく前臨床研究に際しては、用いるサルの選別が重要と考えられる。今後はヒトにおける中和抗体陽性率に関して、健常人並びに血友病などの患者を対象として陽性率の検討を行う予定である。
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